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『ヴィンランド・サガ』:アシェラッドの “恥ずべき “決断にもかかわらず、後にファンを魅了した理由とは?

『ヴィンランド・サガ』:アシェラッドの “恥ずべき “決断にもかかわらず、後にファンを魅了した理由とは?


『ヴィンランド・サガ』のアシェラッドは、トールズの死をもたらした事によって軽蔑される(悪役的)存在でした。
しかし旅をつづけるうちに、トルフィン同様に魅力的な事が分かり、(最後には)悪役と真逆でファンに好かれる存在になりました。

『ヴィンランド・サガ』の第1期は、トルフィンが復讐、受け入れ、葛藤の旅をしながら、父トールズの死の敵討ちのために強さと技を成長させようとする姿を描いています。
彼の復讐劇の興味深い点は、他の多くの復讐劇とは異なり、トルフィンが父親を殺したアシェラッドに仕えていることです。
また、他の復讐劇とは一線を画す興味深いもう一つの点は、トルフィンがアシェラッドに仕えてるふりをしながら密かに彼を殺すことを企んでいるのではなく、アシェラッドを殺すことを公然と宣言しているところです。

アシェラッドは、ヨーム戦士団の隊長フローキにトールズを殺すよう依頼され、物語に登場します。トールズというキャラクターは、主人公トルフィンの父親であると同時に、人々を守る存在であり、誰からも尊敬される、万人受けするキャラクターです。
その健全でいかにも父親らしい振る舞いにファンはハートを鷲掴みにされました。そんなキャラクターをアシェラッドが悪党にふさわしいやり方で死なせてしまったとなれば、ファンは彼を嫌悪し、一貫してトルフィンの復讐を応援するのが自然な反応でしょう。
しかし、『ヴィンランド・サガ』は、物語が進むにつれて、ファンがアシェラッドに心が向くように物語を展開させるだけでなく、アシェラッドとトルフィンの関係を流血で終わらせるのではなく、修復させるように導いていきます。

トールズの殺害

アシェラッドとトールズの決闘に関する不幸な真実は、どちらが勝っても構わないということです。アシェラッドが生き残る限り、トールズは死ぬことになるのです。彼は物語の中でトルフィンを駆り立てるために、死ぬ必要があったのです。
一方、アシェラッドは自分のアジェンダを進める以外にほとんど選択肢がありませんでした。かくして、ビョルンがトルフィンを人質に捕らえたことが、アシェラッドが部下に命じてトールズを殺させる機会を提供し、決闘が結末を迎えました。
この一連の出来事で重要なのは、アシェラッドの反応です。(トールズとの1対1の決闘の)敗戦によって自らの死を覚悟しましたが、部下の邪魔が入ったことで、仕事を優先する決意をするのでした。

アシェラッドの態度や表情には明らかに不満感があり、それはこの瞬間の彼の思考過程を暗示していました。彼は、名誉ある敗北を受け入れるつもりでしたが、一行のリーダーとしての立場もあったのです。
最終的に彼は請け負った仕事を達成することを選んだわけですが、これが、無邪気なトルフィンを、隙あらばアシェラッドの首を取ろうとする強迫的な殺人鬼に変身させる事につながりました。
この時点で、アシェラッドは卑怯な悪役となり、視聴者はトルフィンがいつの日か復讐を果たす時が来るのを心待ちにすることになりました。それでも、アシェラッドが考え込む姿が映し出された時の余韻は、不誠実な詐欺師以上のものが彼にあることを暗示していました。



アシェラッドとトルフィンの不思議な絆

トルフィンがアシェラッドを殺そうとしているのは疑いの余地が無く、第1期が終わりに近づいてもそのことに変わりはありませんでした。アシェラッドは戦場の難局を切り抜けるため、彼の率いる兵団の貴重な戦力として、トルフィンを使っています。トルフィンが学んだことがいつか自分に不利になることを承知の上で、です。
アシェラッドはこの若いデンマーク人の粘り強さを一定のレベルで評価しており、また自分の命を危険にさらすことなく、うまく利用できるほど賢いという解釈もできるかもしれません。
しかし、アシェラッドがいくら悪党であっても、トールズを殺したことの重さとそれがもたらす影響を理解しており、彼の影響下で力をつけた少年の手によって、将来、自らの命が危険にさらされるかもしれない事を、受け入れていることは明らかです。

彼らの絆は、常に復讐する側と復讐される側の立場ながら、トールズの不健全な親代わりとして成長していきます。二人の関係は共生に必要なものとなり、その過程で、傲慢で暴力的な人格に隠されたアシェラッドの奥深さを垣間見る事もありました。
こうして、たとえ全く異なる理由であっても、2人は生存するため互いにますます依存していくようになり、合間に、視聴者はアシェラッドのより次元の高い人格構造を見ることができます。
トルフィンの手に負えない行動と理解はできるものの子供じみた執着心は、トルフィンを殺そうと思えば簡単に殺すことができたのに、あえてその暴力を避けるという、アシェラッドのイメージを作り出しました。これはアシェラッドの内面の葛藤とトールズとの約束を守ろうとする高潔な性格をより明らかにしています。

共感できるアシェラッドの背負う過去

アシェラッドが最も魅力的に描かれる瞬間のひとつは、彼の生い立ちにあります。彼が強いられた苦闘、血統を通じて彼に課せられた事の重要性、そして病弱な母親との関係は、リアリティがあり、ダイナミックな敵役としての基礎を築きました。
トールズを倒したアシェラッドというキャラクターは、そのキャラクター性を形成するのに役立つ、共感できる歴史を持ち、このプロセスはほとんど常に視聴者がキャラクターをより深いレベルで理解するのに役立ちます。キャラクターが深く理解されればされるほど、その苦悩や欠点を通して、より好感が持てるようになるのです。

1期の終わりには、アシェラッドは、まだ悪漢の仮面をかぶっているとはいえ、幅広い人格特性を示すようになり、トールズの死は、作品の中で最近起こった出来事というより、伝説の物語のように感じられるようになりました。
スヴェン王を殺し、ウェールズの安全とクヌートの命と権力を確保するという最後の行為を通じて、アシェラッドはその仮面を捨て真の姿を皆の前にさらけ出しました。その怪物のごとき立ち振る舞いの瞬間、アシェラッドは作品を通してこれまで以上に、彼に近い人々や視聴者の目に触れることになりました。
物語が進む中で、彼はより好感を持てるようになりましたが、トルフィンが彼に死なないでくれと懇願する瞬間こそが、心に感じ入るもので、視聴者を最も感動させたものと言って良いのかも知れません。

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